本を抱えて窓際へ

かつて文学少女だった30代の読書録。大人になってからは、実用的な本も読むようになりました。

日本人が鬱になりやすい理由は遺伝子にあり?『幸福の資本論』橘玲

『幸福の資本論』(橘玲著)については、前回のブログでも紹介したけれど、

本書の「13章 うつは日本の風土病なのか」にものすごく勇気づけられので、今回もまた取り上げてみたいと思う。

↓ 以下は、前回の記事です。

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日本は「ハッピーケミカル」であるセロトニンが少ない!

実際にうつになる日本人は多いが、日本人の幸福感は遺伝子レベルで欧米人と違うという有力な説があるという。

セロトニンという神経伝達物質は「ハッピーケミカル」と言われるように、人間の幸福感に大きな関りがあると言われている。

日本人にうつが多いのは、セロトニンが少ないからだとか。

セロトニンを運搬する遺伝子(セロトニントランスポーター)にはS型とL型があり、それぞれの型が組み合わさって、「SS」「SL」「LL」という三つの遺伝子型が決まる。
このS型はセロトニン運搬能力が低く、L型は運搬能力が高い。

S型の遺伝子を持っている人の方が、L型の人よりネガティブなことに反応しやすいのだ。

このセロトニン運搬遺伝子は人種によって違い、アフリカ系の人はLL型が多く、白人、アジア人の順で少なくなる。

特に日本人はS型の保有率が欧米人に比べて5割も多く、LL型は全体の3%しかいない。日本は、LL型の人が世界一少ないという。

97%の日本人は、SSまたはSL型で、セロトニン分泌量が少なく、ネガティブなことに引きつけられやすい

日本人は、実は超ポジティブでもある!

とはいえ、日本人がうつになりやすい性質があると決めつけるのは性急だ。
その理由は、最も楽天的な性格の人の中に、「SL型」やそれに類する遺伝子型が見つかったから。
SL型の人の方が、LL型よりも楽観的傾向が強かったという。しかも、SS型が一番楽観的だという結果も出た。

SS型はストレスによって抑うつ状態になりやすいのは事実だが、良いことが起きた時にも同様に、深く感じることができる。

逆に、楽観的だと言われていたLL型は、ただ単に鈍感なだけだったそう。

セロトニン運搬遺伝子の発現量が少ない人は、高い人に比べてポジティブなものでもネガティブなものでも、感情的な背景に非常に敏感だ。

なぜL型の遺伝子からS型が現れたのかというと、閉鎖的な農耕社会の中で、親密な人間関係にうまく適応するためではと言われている。
相手の気持ちに配慮できるようになったことで、大きな共同体を維持できるようになったのではと考察している。

日本人は豊かな感受性のせいで遺伝的に確かにうつになりやすい傾向にあるが、自分に適した環境に身を置くと、大きな幸福を手に入れることができるようになるのだ

ストレスのない環境を創り上げることができれば、楽天的と言われるラテン系やアフリカ系の人よりも楽天的になれる可能性も秘めている。

真面目、几帳面、責任感が強い、人の目が気になる、人間関係のトラブルを嫌うという気質を持った人を「メランコリー親和型」と呼ぶが、典型的な日本人の性格と言える。


ちなみに私は几帳面以外は全部当てはまる「ザ・日本人」な性格なのだけれど、以前はそれがちょっと嫌でもあった。「もうちょっと楽観的に生きられたらいいのにな」と思うこともよくあった。

でも、本書の13章を読んで、自分に合った環境を見つけることができれば、あまり敏感ではないタイプの人よりも、大きな幸せを感じることができると知って、とても勇気づけられた。

幸福に生きるためにも、自分自身をよく知って、自分にとってのベスト・プレイスを見つけたい。