本を抱えて窓際へ

かつて文学少女だった30代の読書録。大人になってからは、実用的な本も読むようになりました。

日本文学

今更読んだ『桐島、部活やめるってよ』学校という狭い世界が全てだったあの頃

今更ながら、『桐島、部活やめるってよ』を読んだ。数年前、大学の教授と飲んだときに「面白かった」と言っていたのをふと思い出したので。(映画版も良いですよ!) 桐島、部活やめるってよ 神木隆之介 Amazon 何だかとても身に詰まされる小説だった。 高校…

泉鏡花の外科室ーかつて秘密は墓場まで持っていくものだった

作者は泉鏡花。怪奇的・幻想的な作品で知られている、明治から昭和にかけて活躍した作家だ。 この『外科室』は15分くらいで読めるくらいの短編小説で、明治時代に書かれた、不思議で壮絶な物語。文体が古めかしいのでちょっと読みにくいが、内容が面白いので…

美女に憧れるストーカー男の深い業ー川端康成の『みずうみ』

この小説は、いわゆるストーカーがテーマになっている作品です。 エロティックな小説が好きな人におすすめです。 知人の日本文学好きベルギー人男性が「面白かった」と言っていたので、私も気になって読んでみました。 川端康成の『みずうみ』ストーリー紹介…

寺山修司の『田園に死す』ー鬱陶しい母性に蝕まれてゆく恐怖と恍惚。おすすめ邦画

良い意味で、クレイジーな映画だった。 夢野久作や江戸川乱歩のようなエログロナンセンス、シュールレアリスムをぐつぐつ煮込んだ、とっても濃い味の作品。 暗くて閉鎖的で狂気に満ちた田舎から抜け出そうとする、寺山修司の少年時代を表象するような一人の…

谷崎潤一郎『陰翳礼讃』日本文化は羊羹の味わいのように奥深い。

私はかつて十年ほどヨーロッパに住んでいたことがあるのですが、日本を離れてみると、日本の良さが改めて身に染みて感じられます。 日本人や日本文化の持つ礼儀正しさ、清潔さ、何でも受け入れてしまう大らかさ、文化的な豊かさ、奥ゆかしい優しさが恋しくな…